会計事務所の未来を変えるマーケティングの可能性は無限大 [事務所経営]
これからの会計事務所におけるマーケティングの重要性についてはこれまでにも何度か取り上げてきた。そこで今回は、実際に10年以上マーケティング業務を経験し、いち早く税理士の仕事に活かしている稀少の税理士・海江田博士氏について紹介しよう。
海江田氏がマーケティングの会社を始めたきっかけは、大学時代の友人からの誘い。当時はまだ一般企業におけるマーケティング調査に対する意識は低く、会社が軌道に乗るまで数年を費やした。それでも、自分たちの足で調べ、それを分析し、評価し、依頼先にリポートすることに大きなやりがいを感じ、文字通りのめり込んだという。
バブルの時代とともに東京でマーケティングの最先端を走り抜けた海江田氏が故郷の鹿児島県志布志市に戻ったのは94年のこと。父親の会計事務所に入所するも、隣町の松山町で事務所を継承し、すぐに独立。2001年に父親の事務所と統合し、現在に至る。
鹿児島に戻った直後、会計事務所の現実に驚きを隠すことができなかったという。それは、マーケティングという概念とはあまりにもかけ離れた状況だったからだ。パソコンを1人に1台与えるなどOA機器のインフラ整備に力を入れ、その後少しずつ、税務と経理処理だけの業務から関与先企業の経営支援に関する仕事を増やしていった。そして現在は、経営支援、アドバイス部門を独立した事業部制にして、ここには担当顧問先を1件も持たない専任担当者を配置するなど新しい試みを実施。既に地元のJC(青年会議所)や商工会などから勉強会やセミナーのオファーが入り始め、数多くの講演をこなしている。
現在海江田氏は、農業に大きな関心を寄せている。ここ数年で農業法人に移行する関与先が増えてきているからだ。今後は事務所としても積極的にそういう指導をしていきたいという。
これからの会計事務所は、顧客に対する経営支援が必要不可欠。マーケティングの可能性はまだまだ広がる。ここにきてようやく自分の得てきた知識やノウハウを活かす場面が出てきたと、手ごたえを感じ始めている海江田氏には、会計事務所の確かな未来が見えているのかもしれない。
![]()
所長と職員のベクトルを合わせることからすべては始まる [事務所経営]
会計事務所の職員にとって「お客様」とは? だれもが「関与先」と考える、その基本的な問題に異を唱える職員がいる。それが株式会社旭会計事務所(山形県山形市、柴田健一所長公認会計士・税理士)で営業担当を受け持つ松田佐吉氏だ。その考え方とはどのようなものだろうか。松田氏は、職員にとってのお客様は「所長」とし、それが会計事務所の職員が最も行ないやすい営業の基本になるとしている。
職員自らが関与先と契約し、報酬を直接もらっているわけではない。したがって職員にとっての「お客様」とは関与先ではなく、所長だというのである。
関与先から相談を受け、その対応の仕方や解決方法に悩む職員は多い。松田氏によれは、これも「自分のお客様は関与先だ」と思い込んでいるため。これを「職員の本当のお客様は所長だ」とするならば、どうとらえればいいのか。松田氏の答えは簡単だった。「所長に提案すればよいのです。それに対して所長がどう対応するかで、職員は動かなければなりません。その結果として、その時点で考え得る最善の方法で対処すればよいのです」
松田氏の考え方は一見、全員経営を否定しているようにも聞こえる。しかし、そうではない。根底では全く同一と考えられる。
職員にとってのお客様が関与先ならば、職員はお客様が納得し、満足することをしようとする。そこで自主性を重んじれば、結果として事務所としての対応がバラバラになる危険性もある。だからこそ、理念やビジョンを明確にすることで方向性を統一する必要が出てくる。
そこで、職員のお客様が所長と考えた場合、職員は「所長に満足し、喜んでもらいたい」と考える。所長が満足することとは何か。旭会計事務所であれば「関与先が納得し、満足すること」である。こうして「所長」を中心に動くことで、事務所全体の方向性が合致し、揺るぎない統一性が生まれるのだ。
例えば、一人の担当者が20件の関与先を担当していたとする。職員のお客様が関与先ならば20人への対応に苦慮しなければならない。しかし、お客様が所長なら、担当先が何件あろうとお客様は所長一人。そういう視点に立てば、職員の負担も軽減し、所長という一人のお客様に全力でかかわることができると松田氏はいう。
![]()
地味な仕事の積み重ねも重要な評価ポイントに [事務所経営]
MAC税理士法人(愛知県名古屋市、代表社員税理士斎藤孝一氏、能登明俊氏)が事務所経営で特に重視しているのが職員評価。公平かつ明確な評価とコミュニケーションこそが、経営計画を効果的に活用する上で重要になるととらえている。
MAC税理士法人が職員評価にあたって考えたのは、どの仕事をだれがどの程度担当(貢献)しているのかを明確にすることだった。それをあらわしたのが売上管理表という文書だ。すべての業務(サービス)において、だれがどの程度貢献したかを記入し、集計することで、個々のすべての売上に対する貢献度がはっきりしてくるという。
ここでの効果は評価の漏れがなくなること。後でまとめて評価しようとすると、忘れてしまっているものだ。売上につながる請求書を作成する感覚で貢献度を記入すれば、評価が明確になるのだ。
売上がつく仕事に関しては、関与した担当者ごとの割合を決め、その合計が100になるようにしている。が、マニュアル作成など売上に直接結びつかない業務のポイントを青天井にしている点が、ここでの大きな特徴になる。目立つことばかりが仕事ではなく、地道に事務所のために貢献した職員にもスポットを当てようという姿勢を示している。「地道な仕事をきちんとこなす人を評価する仕組みが大事なのです」(斎藤氏)
もう一つ、MAC税理士法人が重きを置いているのが職員とのコミュニケーション。3ヵ月に一度、職員1人につき1時間の面談を実施している。職員一人ひとりがどんな悩み、不満を抱えているかを幹部が把握する。面談は経営計画を上手に活用する方法として位置づけられている。
経営計画の活用方法としては、ほかに採用活動が挙げられる。同税理士法人では、採用に関して21の質問事項から成る採用面接シートを用いている。そこには営業力、組織性、社会性の3項目について各7つの質問が用意されている。
しかも、このシートは採用時だけのものではない。入社後も全社員がその採用面接シートにチェックを行なうという。そうすることで事務所が求める人材を明確化している。
経営計画書は事務所経営のバイブル。職員評価、採用など、どんな場面においても経営計画書をベースに仕組みをつくる必要がある。
![]()
経営計画が馴染みやすい組織になるための条件 [事務所経営]

なぜ、事務所経営に「経営計画」が必要なのか? 明確な目標を設定することにより、経営者が考える経営の形に近づけるためである。事務所内での考え方や目標の共有なしに事務所経営は成功しないのだ。
経営計画に欠かせないのは、職員の行動の原点となる経営理念。ここで重要なことは、理念が所長自身の言葉になっているかどうかだ。稚拙な言葉でも、所長が自身の言葉で話せば、聞いた職員には感動を与えることができる。どんな美辞麗句でも職員に伝わる言葉でないと、行動を変える理念にはならない。
次は行動目標。事務所の利益向上は、個々の職員の成長なしではありえない。それには、明確な数値目標を設定し、それに対してどういう行動をとるのか、何をすべきなのかを明確にした行動目標が必要なのだ。
個人の行動目標を事務所全体の経営計画に盛り込むことで、事務所全体の大きな成果が期待できる。メンバー全員の行動目標を知ることで、互いにフォローし合い、皆で目標を達成しようというまとまりが望める。
どんなに立派な経営計画が策定されても、職員全員が活用しなければ“絵に描いた餅”。そうならないためには、経営計画書を事務所のバイブルにしてしまうことが大事だ。職員が経営計画書を常に持ち歩き、ボロボロになるまで使いこなせば、経営計画の「考え」が、職員一人ひとりの「行動」へと変化するのだ。
経営計画が馴染みやすい組織とは、権限委譲ができている組織だ。これができていないと、経営計画が効果的に稼働しない。各職員に経営感覚を体得させるため、独立採算に近い制度を採ることが必要だ。また、組織横断型の委員会制度を組み合わせた二重らせん構造が理想的といえる。
職員に経営感覚を身につけさせるには、経営情報の開示=オープンブックが大前提となる。売上が個人の報酬にどのように反映されるかを明確な理由をつけて開示することで、職員の経営に対する意識が大きく変わるという。経営数値の公開は、職員を動かす最強の一手だ。
![]()
確定申告でわかる貴方の事務所の顧客満足度ミニチェック [事務所経営]
確定申告も残るところ一週間。既にほとんど終了しているという事務所もあるだろうが、多くの事務所ではこれからが最も忙しくなる一週間かもしれない。まさに会計事務所にとっては最繁忙期となる確定申告であるが、事務所経営からみれば、ほとんどの事務所では、まだ一年の4分の1が済んだに過ぎない。
その確定申告だが、あなたの事務所では今年何件の確定申告を行なっただろうか。大きな事務所では1000件を超える確定申告をこなす事務所もあり、そうした事務所の中でも全部の申告書に手書きのサインをする所長もいるとのこと。単純計算でも1日40枚程度のサインをするのだから、大変な作業である。え、誰です。ウチの1年分より多いなんて寂しいことを言うのは・・。
今回の本題に戻すと、貴方の事務所の確定申告件数は増えましたか、減りましたか? 具体的に何件増加して、何件減少しましたか? その数を調べるだけで、あなたの事務所がお客様からどう思われているかが、大体わかってしまうのだ。
仮に昨年100件の確定申告があり、今年は110件になった。つまり純増10件である。100件が110件になったのだから、単純計算では10%増である。こう書けば順調な成長になる。しかし、実は内容次第ではかなり危ない事務所もあることがわかる。
例えば、増加10件で減少なし。これは一見良さそうに見える。しかし、100件程度のレベルで増加率が10%程度というのは、実はかなり危ない。社会における認知度が低い可能性がある。こういう事務所の今年の課題は認知度、地名度を向上させることである。減少なしということは、全員戻ってきたということであるから、サービスには満足してもらっているとも取れる。
一方、30件獲得で20件減少し、結果10件増という事務所はCS的に危ない事務所でもある。30件獲得(30%増)という営業力は評価できるが、2割も失ってしまうのでは、お客様が満足していないという証拠。営業力もさることながら、サービスの充実がもとめられる。
そういうことから、大体20件前後を獲得し、10件程度減少という事務所が一番バランスは取れているといえる。ただ、CS的にはまだ100%の満足度が得られていないのだから、こういう事務所もCSにもっと力を入れる必要があるかもしれない。
まだ、4分の1。しかし、もう4分の1。そして単なる「忙しい」だけの確定申告に終わらせるのではなく、ちょっとマーケティング的分析を加えた事務所経営のサンプルにすることで、非常に有意義な確定申告にすることも可能になる。
![]()
パート即戦力化の仕掛けと仕組み作り [事務所経営]
現在の会計事務所では、パートを採用してもあまり定着せず、戦力として活用しきれているとは言い切れないのが現状。それには「パートは社員よりも格が低い」という意識が、社員とパートの双方に根づいているのが起因しているという。
そこで、タックス総研ではパートを「スタッフ」と呼び、「社員もパートも皆同じ」という意識を浸透させている。「社員とスタッフは労働条件が違うだけ」と捉えている。
パートを採用する際、気をつけるべき点とは、雇う側が育成のシステムをしっかりと構築することだという。そうすれば「一般常識がある人ならばだれでも、問題なく戦力として貢献してもらえる人材になります」(石橋氏)。逆にいうと、育成のシステムが全くない状態では、いくら優秀な人材を採用しても、定着は難しいともいえる。
タックス総研のスタッフは全15人。そのうち会計事務所での勤務経験者はたった一人。未経験者の主婦がほとんどを占める。育成のシステムさえしっかりと築けば、未経験者を採用しても生産性を上げられるということを裏付けている。
タックス総研でのパート活用のキーワードは「公平」だ。この場合、公平=オープンと定義づけている。よかったことも失敗も、代表も社員もスタッフも、例外なく共通でオープンにすることで、公平感を皆で共有できるシステムを導入している。
また、パート定着にあたって石橋氏は次の改革を意識して実践した。それは1.目的意識を持たせる、2.責任ある仕事を与える、3.ルールを整備する、の三つだ。目的意識を持って新しい業務を与え、その成果についてさらに高いレベルを要求する。また、スタッフが安心して業務を進められる体制を整え、パートが安心して働ける仕組みをつくった。
現在のタックス総研では、会社でコントロールするまでもなく、スタッフが自らレベルアップを意識して業務に取り組む所風になったという。
【関連商品】
『パートさんがすぐ戦力になる仕掛けと仕組みづくり』(ビデオ3巻+レジュメ+マニュアル)
![]()
「評価制度」なき経営計画は絵に描いた餅になりやすい [事務所経営]
既に経営計画を導入している事務所で、「もう一つ上手くいかない」と悩む(悩んでいた)事務所のほとんどが評価制度がキチンとしていないものと思われる。また、評価制度を変えてから、やっと経営計画が考えたとおりに稼動するようになったという事務所もかなりあるようだ。
これも「職員のための経営計画」という考え方をすればあたり前のことである。実際に行動する職員の評価基準がキチンとしていなければ、どんなに事務所として成果がでても、職員個人のモチベーションは長続きしない。つまりは、一年目は上手にいっても数年でダメになってしまうということである。これでは経営「計画」とは呼べない。そのためにも評価制度をキチンとしなければならない。
しかし、実際には、評価制度が一番難しいといわれる。その理由は、実際の評価では、事務所ごとにより業務の内容が違い、社労士事務所などで一般的に勧められる評価制度が必ずしも事務所の実情にそぐわないケースが多いからだ。
某税理士事務所でも数年前に一度、人事コンサルタントを招き、評価制度を策定したという。しかし、それは既製品であり、事務所にアレンジしたものではなかったそうだ。「ちょっとやっているうちに何か違うと感じるようになった」と同所長税理士氏。しかし、やはり人事評価制度の重要性は理解しているので、今年になり、所長自身が中心となり、人事コンサルの専門家に相談しながら、評価制度を改定しているという。「来年から実施するけど、多分数年は試行錯誤しながらだと思います。でも、大事なことだから、それぐらいの覚悟は必要」と話す。
人事評価はルールに基づく制度が求められる。しかし、それを所長一人で作成するのは難しい。だからといって、既製品で代用してもやはり上手くいかないのだ。職員の何をどのように評価するのか、専門家の意見を聞きながら、最低でも所長がたたき台を作る必要はあるように思える。
![]()
何のために誰のために目標を設定するのか [事務所経営]
経営計画において「目標」といえば2つある。数値目標と行動目標である。ここでいう目標設定とは、数値目標のことを指すのだが、単に数値目標だけではなく、大きな意味での職員個人の目標も含まれると考えていただきたい。その目標設定の仕方には、実際に行動する職員の理解と意識はどのくらい存在しているだろうか。
もちろん、やる気のない職員をある一定の水準まで引き上げるにはノルマ的な数値目標は必要であり、それは上司が指示しなければ自分から数値を設定したりはしない。しかし、逆に仕事自体のモチベーションは高くても、それが数値に表れにくい仕事を好む人間もいる。そうした職員には、数値目標だけでなく、違った観点の目標設定を考える必要がある。そこには自ずから、職員個人の生き方とかライフスタイルのようなものが関わってくると考えられる。
つまり「職員のための経営計画」という大前提を基本に考える上での目標設定という概念においては、個人の人生設定とか、個人の目標というものが、どこまであるのかないのかを知る必要があるということである。個人の目標設定と事務所の求める目標が違う場合には、どんなに能力を持っている職員でも必ずしも能力通りに働くとは限らない。そうしたことを考慮する必要もあると思われる。
簡単にいうと「考えることが好きな人間」と「行動するのが好きな人間」である。考えることが好きな人間は例えばマニュアル作りとか、チラシ作りとかに意外な才能を持っている場合がある。しかし、それは会計事務所の場合、表にでる業務ではない。だが、あらかじめ本人の目標のなかに、そうした本人の得意とする業務への目標(時間)を組み込むことで、モチベーションが変わることもある。ここで考えて欲しい「目標設定」とは、単なる数値目標や行動目標ではなく、その目標という言葉そのものに対する概念のことなのである。
ある大阪の会計事務所では、経営計画自体はあるが、職員には公表していない。それは、目標に縛られて欲しくないからだという。そして個人目標を設定させるのではなく、「この事務所でどんな役割をしたいか」ということを職員全員にきき、来年からは、その役割に適した業務ができるように個人指導をするという。
これは、ここでいう「目標設定」のひとつの仕方だと考えられる。残念ながら、経営計画を職員と分かち合っているわけではないが、所長税理士の考える経営計画の中で、職員の重要性と方針がはっきりしているから、数年後を考え、そうした行動が必要だと考えているのだ。
![]()
事務所を成長させる経営計画とは [事務所経営]
「経営計画にとって理念は前提です。理念なき経営計画は絵に描いた餅。何の意味ももちません」。経営計画と経営会議を基本に関与先の100%黒字経営をモットーとする今西崇男税理士(エーアイエフ合同会計事務所・東京)は言う。
競争が激化するなかで勝ち残る会計事務所になるためには、企業化が求められ、それには経営計画が必要不可欠だと思われる。企業化するということは利益を追求するということでもある。しかし、会計事務所が他の企業と違うのは、基本的に企業の最も大事な内部情報に触れる業務であり、「信頼」を勝ち得なければ、事務所の成長はありえない。
ワタミフードの渡邉美樹社長は「お客様の喜びの数が私たちの成長度合いを決める」といっているが、それに従えば、会計事務所は「お客様の信頼の数が事務所の成長を決める」ともいえるだろう。
![]()
その瞬間を大事にするか、長期的な展望を持てるか、それが大事である [事務所経営]
15日には紀宮妃の結婚でわき、それと同じくしてブッシュ大統領が訪日し、首脳会談が16日~17日で行なわれる。両方ともまさに超VIPが集うものであり、15日の東京、16~17日の京都は厳重な警戒がしかれていた。
紀宮妃の結婚は東京・帝国ホテル。日米首脳会談は京都と平日の大都市のそれもど真ん中での開催だけにその周辺の警備は半端なものではない。特に京都では、京都御所を取り巻く周辺の道路を閉鎖し、地下鉄の出入り口も一部通行止めにするという一種の戒厳令状態だという。
11月中旬の京都といえば、紅葉の真っ盛りで一年中観光客でにぎわう街とはいえ、まさに最高の観光シーズンである。その京都の目抜き通りを閉鎖するということは、観光客には多大な迷惑がかかっているはずである。
道路だけでなくホテルも同様だろう。日米首脳会談といえば世界中が注目する。報道陣も世界各国から集まる。小さな都市であれば、こうしたイベントによりプレス特需と言われるような現象があるほどである。しかし、世界の観光都市京都。しかもその一番の稼ぎ時の時期である。プレスが集まらなくてもホテルに空室が生まれる状況ではない。
逆にいえば、報道陣の集まる数だけ観光客は宿泊できないということである。お土産等を含めれば、この1~2日での京都市内におけるマイナスはかなりの額になるのでは
ないか。普通、こうした世界が注目する会議があれば、特需が生まれるものだが、今回に関しては、そうとばかりはいえない。むしろ、この一両日の昨年度同期と比べればマイナスになるとも言われる。
紀宮妃が結婚式をあげた帝国ホテルでも同様だ。聞くところによれば、この日は全ての宿泊客の利用をさけ、まさに天皇家貸切状態だったという。神前の改装費などむしろ出費のほうが大きかったはずだ。平日とはいえ、大安であったこともあり、普段だったら結婚式の一つや二つ入ることだろう。また1000室を越える客室で例年この時期は稼働率95%超だという。そうしたことからも、今回の結婚式の開催が決して短期的にはプラスだったはいえないだろう。
しかし、京都も帝国ホテルも決してマイナスにはならない。すさまじいまでの報道合戦により、むしろ中長期的にみれば大きなプラスが予想される。結婚式が行なわれた「蘭の間」、そして披露宴が行なわれた「孔雀の間」は、テレビ各局で繰り返し繰り返し報道され、多くの人の頭にインプットされる。今後、地方の旧家で結婚を控えている人などは、そうしたステータスを求めて帝国ホテルで結婚する人が増えるだろう。
京都も同じだ。今回の首脳会談では、金閣寺や清水寺を訪問するという。当然、足止めをくらう観光客は多いのだが、それが世界各国に報道される。来年以降、京都を訪れる外国人はこれまで以上になるかもしれない。そうしたことが予想される。 このように短期的なマイナスと中長期でみたプラスの経済効果をどう考えるかによって、こうしたイベントに対する考え方もかわる。日頃のお客様を大事にするのか、今後の新規顧客への拡販を意識した戦略をとるのか。それによって大きく変わるのである。
![]()
事務所を成長させる経営計画とは [事務所経営]
経営計画のない事務所は大きくはなれない。そう考える税理士が急増している。しかし、実際にはどう策定したらよいのか、あるいは策定はしたものの、思ったほど効果があがらないという事務所も多いのではないだろうか。
「経営計画にとって理念は前提です。理念なき経営計画は絵に描いた餅。何の意味ももちません」。経営計画と経営会議を基本に関与先の100%黒字経営をモットーとする今西崇男税理士(エーアイエフ合同会計事務所・東京)は言う。
競争が激化するなかで勝ち残る会計事務所になるためには、企業化が求められ、それには経営計画が必要不可欠だと思われる。企業化するということは利益を追求するということでもある。しかし、会計事務所が他の企業と違うのは、基本的に企業の最も大事な内部情報に触れる業務であり、「信頼」を勝ち得なければ、事務所の成長はありえない。
ワタミフードの渡邉美樹社長は「お客様の喜びの数が私たちの成長度合いを決める」といっているが、それに従えば、会計事務所は「お客様の信頼の数が事務所の成長を決める」ともいえるだろう。
企業化にむけて必要不可欠なものが経営計画であり、経営理念がその前提となるならば、まずは経営理念が明確になっているかどうか、自分の言葉になっているかを検証しなければならない。職員全員の意見を聞く必要はない。もちろん、全員で考えを出すということを否定するものではないが、経営理念は経営者の魂である。経営者が自らの魂を人と相談して決める必要はない。何をしたいのか、自分は税理士として何をすべきなのかを自らの言葉で考え、そして職員全員に知らしめるべきなのである。
なぜ、そうする必要があるのか。それは言葉は風化してしまうからだ。たとえ素晴らしい言葉、理念であっても、その本当の意味を正確に理解できるのは、最初に言葉を発した本人とごく一部の人間である。経営者本人が自らの言葉で職員、関与先に浸透させることがのぞましい。
経営理念がなくても経営は可能である。理念などなくても売上はあがる。しかし、それでは、所長税理士もしくは職員の個人プレーだけで売上があがるだけで、チームとしてはバラバラになる可能性がある。野球でいえば、たとえ一人の選手が首位打者を取ろうが、最多勝を取るような投手がいても、チームとして一丸になっていなければ、なかなか優勝をつかむことはできない。そのため、最近ではスローガンを掲げるチームがほとんだ。それにより、チームとしてどんな野球を野球を目指すかという方向性がしっかりすることで、秀な選手の力をチームの力として発揮することが可能になる。それが企業における経営理念なのである。
また、経営理念を考えるにあたり、もう一つ注意すべき点がある。それはわかりやすい 言葉、印象に残る言葉が望ましいということである。
先の総選挙で小泉首相は郵政民営化を争点に掲げ、「改革を止めるな」をキャッチフレーズに掲げた。政治手法としてはやや乱暴なきらいはあるが、分かりやすいという点では他党を圧倒していた。
誰にも分かりやすい、覚えやすい言葉というのは、職員に対しても、また関与先に対しても重要になる。関与先に職員が事務所の経営理念を問われたとき、簡潔明瞭に答えられるのが望ましい。「どういう意味なのか」と聞かれたときに、答えられないようではその経営理念は単なるお題目に過ぎないといえる。
そうした経営理念があってはじめて経営計画に魂がはいり、実効性がうまれる。「経営計画を策定したのに、職員がバラバラに動く」と考えている事務所の所長税理士は、経営理念を職員全員に質問してみたらどうだろう。恐らく全員が同じ解答にならないのではないだろうか。そうならば、自分でもう一度、今ある内容を考え直し、自らの言葉に置き換えてみる必要があるのかもしれない。
![]()
思い込みによるミスは相手も自分も不幸にする [事務所経営]
まさに晴天の霹靂。喜色満面でインタビューに答えていた陽選手の顔が見る見るうちにこわばった。自らが希望していたダイエーに入れると思っていたのに、実は違っていた。しかも、抽選にあたったのは、地元からは一番縁遠い北海道日本ハム。感想を聞かれた陽選手は、しばらく呆然としたのち、搾り出すような声で「うれしいです」。正直、よく「うれしい」と言えたなと思うほどショックありありだった。
事の発端は単純なミス。抽選用紙に押してある「NPB(*)」の印鑑を「当選」の記号だと勘違いしただけ。今年初めて行なわれた高校生と大学・社会人を分けて行なう分離ドラフト。それに伴い、抽選用紙を変えていたのだ。従来は、「外れ」の場合、まったくの白紙。「当たり」の方には「交渉権獲得」のはんこが押されている。それは今回も変わらない。しかし、「外れ」=無地だと思っていた、抽選者が、何かはんこが押してあるだけで「当選」したと勘違いしたのである。
なぜ、こんなことが起きるのか。答えは簡単。抽選用紙が従来と変更した(両方とも「NPB」の判がおしてある)ことを事前に周知させていなかった。それだけなのである。つまり、機構側の「思い込み」である。
「これは、分かるだろう」「これで分からないはずは無い」「こんなことは出来るだろう」等々。そうした思い込みがビジネスの場で大きなミスを引き起こすことは意外と多い。しかし、そのことで、被害をうけるのは相手でもあり、自分でもある。思い込みによるミスは相手も自分も不幸にする。
今回のドラフトでもう一人の被害者だった辻内選手は外れから当たりに変わった巨人が第一志望だったから、二度目の記者会見はジョークも飛び出すにこやかな会見となった。しかし、当の抽選を引いた堀内前監督は、「日本語も読めないのか、だから勝てないんだ」と評価を下げてしまった。
分かっていると思われても一応確認する。この確認の作業がビジネスには欠かせない。分かりきったことを言われると「分かっているよ。何度もしつこいな」と煙たがられるだろう。しかし、「分かっているつもり」と思い込んだことでミスを犯すよりははるかにいいかもしれない。特に失敗の許されないビジネスでは、「思い込み」を徹底的に排除する必要がある。そのことを今回のドラフトで痛感させられた。
![]()
日中外交を成功させた周恩来の気遣いにCSの原点をみる [事務所経営]
田中角栄首相が訪中を敢行し、悲願の日中国交正常化を果たしたのが、1972年。今から33年前のできごとだ。その当時の担当者が中国側の対応を明らかにしたという。
それによると、当時田中訪朝の直前にはニクソン大統領の訪中も予定されており、2つの訪朝はほぼ同じ行程が組まれていたという。それは、中国がアメリカと日本を同レベルで考え、同レベルで対応しようとした表われである。
そして今回明らかになったこととして、当時の周恩来首相の行動がある。周恩来首相は元来、夜型の人間だったという。一方、田中首相は早起きだったため、周恩来首相は田中訪朝の一週間前から、早起きをして、スケジュールを調整していたらしい。そこまで気を配るだけ、中国側として成功を期し、その意気込みを感じさせるエピソードである。
そして、こうした気遣いこそがCSの原点である。相手の行動や嗜好を考慮し、それに沿う行動を取る。それがCSであることは間違いない。そこには相手に対する「優しさ」と「気遣い」が求められる。しかし、優しさは過剰になれば、相手の増長を 生む。「何でもやってくれる」という甘えになる。それは時にはトラブルの元になることも少なくない。
もちろん、相手側にも「気遣い」があれば、こうした増長にはなりえない。しかし、相手に気遣いを求めるのは難しい。だからこそ、そこには自らの「境界線」が必要なのである。どこまでは相手の要求に応じ、どこから要求を断るのか。それは今の言葉でいえば、コンプライアンスということにもなる。
コンプライアンスというのは「法令遵守」であり、法に対し厳守するということであるが、人間とした場合、自分の信念(方針)に対しコンプライアンスを守るかどうかということでもある。
サービス業においてCSは一番大事な考え方でもある。しかし、それを実践するためには、 法令だけでなく自らの「信念」に対するコンプライアンスを設定・遵守する必要もあるということである。そして、そのことはビジネス相手にだけでなく、仕事を 進めるうえで大事なことである。上司に相談するときのタイミング。他人に仕事を依頼する方法。気遣いとコンプライアンスが常に問われているのである。
中国と日本はいま、政治的にはあまり有効的な関係とはいえない。しかし、その一方で物凄い勢いでビジネス的交流は進んでいる。今の両者にかけているのは、日本側には周恩来首相がとったような「気遣い」であり、中国側にはコンプライアンスの徹底なのかもしれない。
![]()
どうする? 会計事務所の経営計画 [事務所経営]
経営計画というと数字だけを山ほど並べて作るケースがある。関与先に勧める場合でも、社長と密室にこもって作り上げる人がいる。会計事務所自身での経営計画でも同様だ。しかし、経営計画とは本来、社員と一緒になってつくるものである。
また、財務内容を公開しなければ本当の経営計画とはなりえない。ここでいう財務内容とは、B/Sではなく、P/Lの公開である。そして、これは評価にもつながってくる。
経営計画を社員と一緒につくるうえで大事なことは社員にいかに情報を公開していくかということである。そのひとつがお客様の情報である。自分たちにはどんなお客様がいるのか、どんなお客様が自分たちのサービスを欲しているのか、どんなお客様が自分たちのサービスに不満を持っているのか。そうした情報を常に社員が接することができるようにするべきである。
ここまで情報はオープンにすべきと話してきたが、何も全ての情報をオープンにする必要はない。例えば、B/Sはオープンにする必要はないと思われるし、肝心なのは売上と利益の目標と現況、そして利益に対する還元の仕組みをきちんと明確にし、オープンにする必要があるということである。
そして今の現況に対する情報である。つまり、目標に向かって勝っているのか、負けているのかということである。戦争しているのに状況がわからなくては勝負にならない。そうした状況を隠すことは、欺瞞につながり、それが虚偽の報告になり、誹謗中傷の基になり、それが伝承され、悪しき文化が構築されてしまう。それを防ぐためにも情報の公開は必須条件ともいえるのだ。
そして将来への情報である。いわゆるビジョンとゴールだ。将来、どんなことをするのか。何を目標にするのかということを明確にしなければならない。
経営計画が必要な理由はそれだけではない。経営計画には当然目標が記されるわけだが、目標がなければ評価の基準がなくなる。つまり、公平な人事評価をするためにも経営計画が求められるのである。
例えば、監査担当者などであれば、担当件数(顧問料)などの目標のほかに、経営計画の策定だとか、保険だとか、資金繰り等々のスポットとなる契約件数などを目標に掲げさせるのもいいだろう。また、内勤のパートなどの職員にも、時間での作業の効率アップの目標を掲げさせるなどしても良い。できるだけ多くの職員に目標を持たせ、そして数値をオープンにすることが望ましいと思われる。
![]()
会計事務所の給与の実情を検証する(後編) [事務所経営]
(前編はこちら)
業績型給与における手当の実際
これまで会計事務所の給与は手当が多いという点が特徴だったが、こうした傾向も様変わりしている。中には通勤手当以外は一切ないという事務所もあるほどだ。また、社労士から手当が多いことを指摘され、簡素化を求められた事務所もある。
このあたりにこれからの給与の未来図があるといえるかもしれない。つまり、月給は諸手当なしの定額制。住宅や家族といった個人の事情には配慮せず、成果は賞与で精算する。
こうした給与制度はすでに一般企業では導入されている。会計事務所の給与も、より一般企業のそれに近づいていることもあり、シンプルな形になっていくことが予想される。さらに、将来は現在のインセンティブ手当も賞与の評価項目として形を変えていくことが考えられる。
また、残業代についても支給しないという事務所が増えてきた。これはむろん合法的ではないが、作業量や業務時間を評価しないという考え方が一般化していると見るべきかもしれない。
![]()
会計事務所の給与の実情を検証する(前編) [事務所経営]
会計事務所にとって人は基本商品。その評価を決める給与の仕組みは大きな課題といえる。業界全体が大きな曲がり角を向かえる中で、これまでの制度にはほころびが見えてきたという指摘もある。事実、制度の見直しを迫られている事務所も少なくない。(「月刊シリエズ」2004年6月号より)
給与の仕組みの基本
成果主義全盛の今日、会計事務所の間でもこうした考え方を給与制度に取り入れる例が増えている。しかし、一方で『虚妄の成果主義』(高橋伸夫著)といった本がベストセラーになるなど、成果主義に対する批判も注目されている。
これは給与や人事評価の難しさを立証する話とも言える。つまり、給与制度にはこれがよいという正解などはないということだ。
はじめから結論めいたことを言えば、会計事務所の給与は個々の事務所の戦略によって大きく変わってくる。まず職員の仕事をどう位置付けるのか。これによって給与の仕組みは大きく変わる。
例えば、職員の仕事はあくまでも税理士の補助業務と位置付けるならば、スキル以外では差がつくことはなく、横並びの給与体系になると思われる。これに対して基本的に職員が自己完結の業務を行なっている例では、売上や利益と連動する仕組みが考えられる。
多くの事務所では後者のスタイルを採用していると思われるので、ここでは主にそうした事務所の給与を見ていくことにしたい。
![]()
ビジネスとしての記帳代行業務の再構築 [事務所経営]
ひところ、会計事務所業界では自計化が一大ブームとなりましたが、今日ではやや下火といった印象があります。この自計化の対極に位置するのは、言うまでもなく記帳代行ですが、こちらのほうは昨今見直しが進んでいるように思えます。
既存の中小企業やベンチャー企業などでは経理業務が負担になっている例が少なくありませんし、加えてアウトソーシングという考え方が浸透してきたことも、記帳代行業務の見直しにつながっているようです。つまり、記帳代行のニーズは依然として低くないわけです。現に記帳代行会社の中には顧客を順調に伸ばしているところも少なくありません。
こうした動きを見れば再度、記帳代を見直し、システムを組みなおして収益事業にしようと考える会計事務所があってもおかしくありません。実際、そうした動きも出てきています。従来の会計事務所の仕組みではなく、パート社員を活用してシステマテックに行えば、記帳代行を所内の収益業務とすることもできます。
とはいえ、もちろん記帳代行は高収益事業にはなりません。基本的に利幅が薄いのですから、当然数を増やさなければいけません。100件、200件といった規模の業務を受託することで、この仕事は成り立ちます。そのためにはターゲットを絞って営業する必要があります。
システムを作る。ターゲットを絞る。この2つのことは、これまでの会計事務所があまりやってこなかったことのように思われます。従来の会計事務所の記帳代行業務は、嫌々ながら頼まれたから引き受けていただけで、この2つを意識する必要がなかったのではないでしょうか。
かつての時代はそれで十分やっていけたわけですが、これからはそうもいきません。これは記帳代行に限りません。効率と同時に品質を向上するシステムを作り、ターゲットを明確にする。事務所が提供するサービスはすべてこの2つが備わっている必要があります。
これからの時代はさまざまな局面で異業種との競合が想定されます。これに勝ち抜くためには、まずこれまでの業界の常識や考え方を捨て、ビジネスとしての業務を再構築する必要があるのではないでしょうか。(「月刊シリエズ」編集部)
![]()
実務より重要な人の接し方を学ぶ [事務所経営]
4月になると、街ではフレッシュマンの姿があちこちで見られるようになります。まだスーツ姿に違和感のある新入社員たちを見ると、初々しい印象も受けます。
しかし、鉄は熱いうちに打てというように、何事も最初が肝心です。最初の教育がその人の社会人としての人間形成に大きな影響を及ぼします。
会計事務所でも新卒を採用するところは少なくありませんが、その教育は十分でしょうか。多くの会計事務所ではOJTによる実務教育を中心に行っています。外部の教育機関を利用する例もありますが、いずれにしても実務が中心になっています。一刻も早く仕事を覚えてもらい、戦力になってもらおうということでしょうが、これは本来的な教育とは別物です。
本来的な教育とは社会人としての常識を身につけ、お客様を中心とする周囲の人々の信頼を得ることです。そのためにはマナー教育やビジネス文書の書き方などはもちろん、さまざまなことを教えなければなりません。
中でも重要なことは人との接し方を学ぶことです。従来、会計事務所の職員といえば、下を向いて仕事をし、できるだけ人と接することを避ける傾向がありました。この原因の一つは、人との接し方を学んでこなかったためだと思われます。
しかし、現代では人とのコミュニケーション能力が極めて重視されます。これは会計事務所のビジネスでも同様です。CSという観点ひとつをとっても、コミュニケーション能力は必須といえます。
では、どのようにしてこれを教育すべきでしょうか。ロールプレイングなどを繰り返し、その対応法を練習するのもよいでしょうが、最も有効な方法はやはり実践を繰り返すことではないでしょうか。
コミュニケーションは苦手、あるいはその手法がわからないという人には最低限の知識を与え、後は実践で鍛えるという方法です。ある事務所では毎年新卒が入社すると、1日の間に名刺を100枚集めてくるという研修を実施しています。方法は一切問わず、とにかく100枚の名刺を集めて来いというわけです。
結果は人によって異なりますが、この研修によって新入社員はさまざまな人に出会い、その接し方を学びます。方法はいろいろあるでしょうが、要は多くの人の接する機会を持つということです。
人は人に出会うことによって学び、成長します。より多くの人に出会い、もまれる機会を設けることこそ、最大の教育といえるかもしれません。(「月刊シリエズ」編集部)
![]()
あなたの事務所のキャッチフレーズは? [事務所経営]
今週から来週前半にかけて、多くの事務所では確定申告の最後の詰めに終われることでしょう。とはいえ、事務所によってその仕事量はかなり異なるようです。規模の小さな事務所でも何百枚もの申告書を書いているところもありますし、逆に大きな事務所でも枚数が少ないケースもあります。
申告書の数が多い事務所の中にはターゲットを絞っているケースも見受けられます。保険の外交員やタクシーの運転手などに的をしぼり、業務の標準化と単価を下げることでまとめて受注する例もあります。
また、個人ばかりでなく、法人の場合も業種特化はいまやあたりまえとも言える時代になってきました。特定の業種の顧客を増やすことで、その分野に強い事務所としてアピールするわけです。
しかし、こうした特化やターゲットを絞るだけでは、営業戦略上十分とはいえません。外部の見込み客や紹介者などにアピールする手法はほかにも考えられます。つまり、業種ではなく、違う切り口で企業や個人をセグメントすればよいのです。
例えば、従業員10人以下の小企業などといった規模で切ることもできますし、フランチャイズチェーンなどの業態、30代の若手経営者などといった社長の年齢に絞る手もあります。そして、こうした絞込みをキャッチフレーズに用いることで、外部に対して強いイメージを与えることができるようになります。
「従業員30人以下の企業様に最適なサービスを提供する事務所です」「顧問先の経営者の大半が30代、40代という若手経営者に頼られる事務所です」などとキャッチフレーズをつけると、特徴が鮮明になり、相手に与えるインパクトも強くなります。
今のところこうしたキャッチフレーズをつけている事務所はほとんど見当たりませんが、特に小規模事務所でニッチ戦略をとっていく場合などには、この方法は有用だろうと思われます。(月刊シリエズ編集部)
![]()
職員の退職をどう防ぐか [事務所経営]
会計事務所も規模が大きくなってくると必ず職員の退職の問題に直面します。有力な職員の独立、はたまた集団脱藩などといった事態を経験した事務所も数多くあります。最近でもこうした話を耳にする機会は少なくありません。
こうした事態は避けられない側面もありますが、それでも事務所の運営やコミュニケーションの取り方によっては被害を少なくすることができると思います。実際、そうした経験をした事務所では、そのときの反省から職員を経営に巻き込むように運営を変えた事務所が多くあります。
例えば、ある事務所では全員参加の研修を毎日行ない、職員全員に発言を促すことでコミュニケーションを図り、最終的には経営の意思決定も全員で行う体制を築きました。また、別の事務所では職員の評価を所長一人が行うのではなく、他の職員も参加させることにより、責任と権限を与えています。
このように職員を経営に巻き込んでいくことは重要なことですが、その前の段階で現状のスタッフのモチベーションのレベルを調べておく必要があるかもしれません。いわゆるモチベーションサーベイと呼ばれるこの調査では、事務所と職員一人ひとりとの距離や関係を測ります。なぜこの事務所で働いているのか、現状の事務所をどのように見ているのか、何が仕事の障害になっているかなど、職員のありのままの考えを聞くのがこのサーベイです。
会計事務所の間でも最近はCS調査を行うところが増えてきましたが、このモチベーションサーベイはいわば所内のES(社員満足)調査にあたります。できれば全員参加でフランクに話し合う場を設けることが理想ですが、それが無理なら無記名のアンケートなどを実施してみてはいかがでしょうか。
いずれにしても現状を正しく把握できなければ、改善の方策も見えてきません。(月刊シリエズ編集部)
![]()
戦略と計画なくして勝利なし [事務所経営]
ここ数年、会計事務所の間でも経営計画を立てる事務所が増加しています。とはいえ、全体から見ればこれはまだ少数派というのが実情のようです。中には「以前は作っていたが、今は日常業務に追われて時間がない」という事務所もあります。しかし、大変革期を迎えた今ほど経営戦略が重要な時代はないでしょう。
戦略なき経営はもはやこの業界でも通用しません。自らが実現しようとするビジョンとそこに至る明確な道程を描いた計画、そして具体的な行動が伴った事務所のみが勝利を得るのではないでしょうか。
ここのところ独立を断念する税理士が増えています。これは独立後のビジョンと計画を明確に描けないことによるものです。反対にここ数年間に独立した若手会計人を見ると、彼らの大半は明確な目標と戦略を描いています。従来の会計事務所にはないコンセプトや独自の営業戦略を持つ会計人もいます。おそらくはそうした事務所がこれからの業界を変えていくのでしょう。
現状はそれなりの成功をおさめている事務所の中にも危険な兆候が見られます。例えば、職員1人あたり1千万円以上の売上がある事務所でも、その売上構成を見ると上位1割の顧客が売上の6割を占めているといった例もあります。この上位1割の企業に変化が起これば、その基盤は崩れ落ちる可能性があるわけですから、これは安定的な経営状況とはいえません。
会計事務所の顧客層はよく2:6:2などと呼ばれますが、成功を収めた大型事務所を見ると1:2(3):7(6)という構造になっているところが少なくありません。つまり、いわゆるAクラスの層が1割、2~3割がBクラス、そして残りの6~7割がCクラスというわけです。報酬額が低い顧客が6~7割という構造は、一見すると収益性が低いようにも見えますが、実際にはそうでもありません。
こうした事務所の所長はCクラスのサービスをどのように改善するかだけを常に考えているといいます。普通ならばBをAに、CをBにいかに格上げするかと考えがちですが、それでは経営の安定にはつながりません。それよりは大多数を占めるCクラスの業務を効率化したり、倒産・廃業を最小限にとどめる努力をすることのほうが安定に結びつくわけです。
経営戦略とはこうした構造を意図的に作り上げることです。もちろん、AやBだけに特化することも可能ですし、現に成功を収めている事務所もあります。重要なことは結果ではなく、狙い、すなわち戦略にあります。
誰を相手に仕事をしていくのか。これからの会計事務所にはまず明確な対象と目標が求められます。
![]()
なぜ、会計事務所は顧客を減らしているのか? [事務所経営]
いよいよ確定申告のシーズンが近づいてきました。多くの事務所では最大の繁忙期となりますが、準備のほうは順調に進んでいますでしょうか。
かつては確定申告にあまり積極的でない事務所もありましたが、ここ数年は経営環境の厳しさを反映してか、そうした余裕のある事務所(?)は少なくなってきたようです。むしろ、従前より確定申告業務の受注に積極的な事務所が増えてきたように思われます。
これまでのように事業者や不動産所得者に限らず、還付申告まで積極的に受注している事務所もあります。中には住宅ローン控除1万円、医療費控除6千円など、具体的な金額を明示している事務所も見られます。
こうした変化の背景には、確定申告を確実な収入源にしようとする、あるいはせざるを得ない会計事務所側の事情があります。顧問先の倒産・廃業、あるいは解約によって多くの事務所が顧客数を減らしています。また、新規拡大に積極的な事務所でも「100件拡大しても純増は20件」といった話まであります。それほど顧客の減少が大きいわけです。
事業者の倒産・廃業件数はここ数年さほど大きな変化はありません。ということは、多くの事務所では顧客の「移動」によって数を減らしているということになります。
この「移動」の中で最も多いのが、職員が担当先をもって退職するケースです。資格を取って独立する職員もいますが、中には前の事務所の顧客を別の事務所に持ち込み、従来よりよい待遇で転職するといった例も見られます。こうしたケースではその職員やこれを受け入れた事務所のモラルが問われる面もありますが、いずれにしても顧客はその職員についていったという事実は認めざるを得ません。
当事者の所長にしてみれば「顧客を持ち逃げされた」という思いが強いでしょうが、こうした事態にいたった背景にはCS(顧客満足)とES(社員満足)の問題があります。サービス業では顧客満足と社員満足はウラオモテの関係にあります。つまり、この両方を実現しなくてはならないわけです。厳しい言い方をすれば、顧客を持ち逃げされる事務所では顧客満足と社員満足の両面に問題があったといえます。
もちろん、紛議の調停などにかければ利益は守れるかもしれません。しかし、これでは事務所に内在する問題は何ら解決しません。
会計事務所業界は今、大きなターニングポイントを迎えていますが、その本質はサービス業になりきれるかどうかということかもしれません。サービス業になるためには、顧客満足と社員満足という2つの課題を避けて通ることはできません。
![]()
職員のレベルアップこそ事務所の成長につながる [事務所経営]
会計事務所における経営資源で最も重要な要素は、いうまでもなく「人」です。この経営資源を磨くことがサービスの充実につながり、収益の向上をもたらします。
弁護士や弁理士など他の士業では、事務所の職員は補助者と位置付けられますが、会計事務所では職員が直接顧客を担当し、報酬を得ることができます。ちなみに、士業の事務所で職員数で規模を表現するのは会計事務所(税理士事務所)のみで、他の士業は資格者数で規模を表します。このあたりにも職員の役割の違いがあるといえます。
したがって、会計事務所では教育や研修に投入する資金はいわば仕入れといえます。実際、事務所の規模にもよりますが、ある程度人員が増えると売上の5%程度を教育・研修費に当てる事務所が少なくありません。職員数が5、6人の事務所でも年間100万円程度の研修費をかけている事務所があります。
では、そうした事務所ではどのような教育研修を行っているのかというと、税務を中心とする実務教育が大半です。まずは会計事務所の職員として必要な知識やスキルを身につけることは最優先ですので、これは当然のことといえます。ただ、大半の事務所が実務オンリーのやや偏った研修を行なっているのはいささか気になるところです。
ルーチンの定型業務のみを担当するならそれでもよいでしょうが、コンサルタントとしての役割を担うならばこれでは不十分です。コンサルタントとしての能力を磨くためには、「聴く」「説明する」「提案する」といったコミュニケーションやプレゼンテーションのスキルを高めなくてはなりません。
職員をコンサルタントとして養成している事務所では、こうした研修もプログラムに組み入れていますが、会計事務所全体で見ればこれはまだ少数派です。しかし今後、会計事務所間の競争が激化していく中で、職員のスキル向上は必須の課題になってくると思われます。実務のみならず、こうした幅広いスキル研修が重視されるのも、時間の問題ではないでしょうか。
◆「月刊実務教育」…「月刊実務教育」は、職業としての会計人に自信と誇りが持てる優秀な職員を育てる研修ビデオです。税務会計実務に加えて、コンサルティングスキルや考え方、職業倫理などをテーマに、毎月の所内研修教材として活用できるように体系的なプログラムを構築しました。
![]()
サービス業の入り口は商品化の考え方にあり [事務所経営]
時代が大きく変化する中で、会計事務所もサービス業だとする考え方が一般化してきました。しかし、そうはいっても資格という名の規制がいまだ手かせ足かせになっているという側面も否定できません。マーケティングや営業に消極的な事務所が多いのも、この点に原因があると思われます。
とはいえ、これまでのようにただ漫然と待っていれば、お客様が向こうからやってくるという時代ではありません。サービス業としての会計事務所はいわば受注産業ですから、こちらから仕事を取りにいかなければなりません。そして、いかに多くの受注を取るかが勝負の分かれ目になります。
この受注を取るという視点に立つと、自ずと必要なものが見えてきます。まず何より大事なのは商品です。その商品が税務・会計という一種類しかなく、しかもそれを顧問業務というひとつのくくりで受注することは、きわめて競争力が弱いといえます。商品点数を増やし、見せ方を変えることは必須の課題です。
最近、若手税理士の間では相続税のパックやインターネット顧問などの商品化の動きが見られますが、これらは商品化や見せ方を工夫する例といえます。そうすることで特徴が明確になり、アピールする点が明らかになるわけです。
ただし、これだけでは十分ではありません。上記の商品化は新規のお客様を取る手段です。これと並行して必要なのが今あるお客様から新たな受注を得ることですので、そのための商品が必要になります。
この場合の視点も2つあります。ひとつは財務コンサルなど、本業に付加価値をつける考え方、もうひとつは人事コンサルなど、周辺分野での商品化です。そして、最も重要なことはその商品が今あるお客様に必ず役に立つということです。
会計事務所はこれまでお客様の顔をよく見ず商品を仕入れ、ともすれば必要のないサービスを提供したこともあったのではないでしょうか。自計化の必要のない企業もあれば、経営計画のいらない企業もあります。コンピュータを入れたけれど会社の中では動いていないというのでは、最悪の商品を売りつけたのと同様です。
こうしたことを考えると、新規獲得の商品は欲しいお客様を明確にすることであり、今のお客様に提供する商品は個々の事務所のお客様の実情によって大きく変わることがわかります。このあたりの考え方がサービス業としての入り口になるのではないでしょうか。(月刊シリエズ編集部)
![]()
社長一人への働きかけでは組織は動かない [事務所経営]
ここ数年、新商品として経営計画の導入を図る事務所が増えています。企業の7割が赤字という状況下で、経営支援に入っていかざるを得ない会計事務所にとって、経営計画は最も扱いやすい商品といえるかもしれません。
しかし、顧客の経営計画を作成する一方で、肝心の事務所ではどうかというと、おざなりになっているケースが少なくありません。中には利益計画すら立てていないという例まであります。これで果たして顧客の指導やサポートができるのでしょうか。
ある税理士法人の代表社員は「事務所は関与先の実験場である」として、所内で経験したサービスのみを提供していますが、残念ながらこうしたスタンスの事務所は少数のようです。自分のところでは使ってもいない商品を他人に売りつける。極端に言えばそん事務所すらあります。
商品やサービスには使ってみなければわからない面があります。特に経営計画のような商品は、作って終わりではなく、Pに続くDCAが重要です。これを行わず、Pだけで終わってしまうのでは商品とは呼べません。
むろん、このPCDAは会社で行うべきことです。その会社の社員一人ひとりが動かしていきます。そこで問題になるがこの社員一人ひとりのモチベートです。計画を実行に移し、その結果をチェックし、行動に変えていく社員にやる気がなければ、計画は文字通り絵に書いた餅になります。
この社員をやる気にさせるというところまでいかなければ、経営計画は機能しません。つまり、会社の内情を把握し、有効な対策を打てなければ、経営計画の導入は意味がないことになります。
仏作って魂入れずとまでは言いませんが、会計事務所が顧客に導入している経営計画には少なからず課題があるのではないでしょうか。経営は社長一人が行う時代ではありません。社員を巻き込まなくては事業の継続はきわめて難しい状況にあります。
したがって、会計事務所の経営支援サービスでも、従来の社長一人への働きかけから、社員全体への働きかけが必要になっています。このあたりの発想の転換と実践がこれからの会計事務所には重要なのではないでしょうか。(月刊シリエズ編集部)
![]()
税理士は社長に最悪の選択をさせてはならない! [事務所経営]
相変わらず中小企業にとっては厳しい環境が続いています。よく言われるように日本の企業のおよそ7割は赤字です。しかし、会計事務所の顧客である中小零細企業に絞ってみると「7割どころか、9割が赤字ではないか」というコンサルタントの指摘もあります。
いずれにしても実情が相当深刻であることは間違いありません。その中にはいわゆる倒産予備軍の会社も多数含まれています。赤字決算が続き、借入金が膨張し、自己資本が減少を続けている。そんな待ったなしの会社が日本全国にあります。
その原因の多くはずさんな計数管理にあります。売上が減少し、利益が出ていないにもかかわらず、給与を下げられないため労働分配率が膨張している。現在の取引先からの受注が減少しているにもかかわらず、積極的に新規を開拓していない。複数部門の売上によって支えられているのに、部門別管理をまったく行っていない。借入金は増える一方で、銀行は個人の資産に貸している状態になっている。これらはいずれも計数管理の甘さに問題があります。
この一事だけでも税理士の責任は重大です。むろん、経営をしているのはその会社の社長ですが、顧問税理士がまともなアドバイスをしていればここまで危機的な状況にはいたっていないはずです。
場合によっては勇気ある撤退を選択することも必要でしょう。少なくとも自らの生命保険での借金返済を考えるという最悪のシナリオよりは、会社をたたむほうがどれほど賢明な選択でしょうか。
顧問先の社長が最悪のシナリオを選択することは、顧問税理士にとっても不名誉極まりないはずです。そうした認識が税理士にあれば、死ななくてよかった人も少なからずいるのではないでしょうか。
税理士の存在はきわめて重要です。特に今のような時代には、そのアドバイスひとつで会社や経営者の生き死にが決まることもあります。まさしく真価が問われるときを迎えているといえるでしょう。
![]()
競争相手より優位性がある事務所が勝ち残る [事務所経営]
日税連の発表によると、今年8月末時点で税理士登録者数が6万8,000人を超えました(6万8,036人)。いよいよ税理士7万人時代が目前に迫ってきました。
しかし、その一方で会計事務所のマーケットは縮小傾向にあります。一昨年の2002年に設立された会社(設立登記件数)は87,544件に過ぎません。これはピーク時の90年(176,058件)と比較すると、半減していることになります。また、この3年間でも00年が98,350件、01年が90,687件と減少しつづけています。さらに、倒産・廃業も後を立ちません。
こうした状況下で、新たに税理士登録をした人たちにとって、独立開業は容易ではありません。かつてのように、何もしなくても自然増で顧客が増えることは考えられません。これから独立開業する人々には明確な経営戦略が求められます。
これは既存の会計事務所も同様です。さしたる特徴のないサービスを不特定多数に提供するといったスタイルでは、経営は成り立ちません。誰に、何を、いくらで、提供するのか、そしてその優位性は何かを明確にしなければ競争には勝てません。
言葉を変えれば、個人あるいは組織としての強みを最大限に発揮することが求められているといえます。競争相手と比べて自分に強み、優位性があるのか。このことがまず問われているわけです。
仮にこれがなければ作っていかなくてはなりません。この作るということをこれまでの会計事務所は怠ってきた節があります。競争に打ち勝つには独自性が必要ですが、独自性とは自らが作ることにほかなりません。
この作業を抜きに税理士7万人時代を生き抜くことはきわめて難しいのではないでしょうか。(月刊シリエズ編集部)
![]()
会計事務所の給与と報酬の関係 [事務所経営]
会計事務所の経営の最も特徴的で有利な点は、顧問料制度にあるといえるでしょう。毎月入ってくる顧問料と年に1回の決算料、この2つの収入が売上の80~90%を占めているケースが一般的です。つまり、売上の8~9割が安定収入として見込めるわけです。他の業種の経営者から見ればこんなうらやましいことはないでしょう。
給与の仕組みを考える上でも、この売上構成はきわめて有利です。固定収入のかなりの部分が読めるわけですから、経費をこれでまかなえればプラスアルファの売上が利益になるわけです。したがって、給与は顧問料収入をベースにすればよいことになります。
ある事務所では、各職員が担当する関与先ごとの収入を確定予算として組み、これをもとに給与額を決めています。そして、この確定予算を上回った売上の三分の一を業績賞与として配分しています。この三分の一の考え方を取り入れている事務所は少なくありませんが、これは内部留保が三分の一、納税資金が三分の一で、残りを職員に分配するというものです。
こうした給与体系では、売上が増えれば、その分賞与が増えるわけですから、職員のやる気につながります。また、売上を増やすためには顧問料以外の仕事を受注するか、新しい顧客を増やすしかないわけですから、やるべきことも明確になります。
このような仕組みのもとで職員が成果を上げれば、売上の上昇に結びつきます。そして、それが善循環していけば売上とともに給与も伸びていくことになり、事務所の成長につながります。
ただし、これにはひとつ条件があります。それは事務所の経営情報、すなわち経理の公開が求められるということです。これができないと形は作れても、実際にはうまく機能しません。
このあたりのジレンマを抱えている事務所も少なくありませんが、情報公開は時代の流れです。個人事務所であっても経営情報を公開する時代を迎えているのではないでしょうか。
顧問料と給与は事務所の戦略そのものといってよいかもしれません。したがって、その仕組みは個々の事務所によって大きく変わって当然ともいえますが、それをうまく機能させるためにはやはり情報公開が重要なのではないでしょうか。(月刊シリエズ編集部)
![]()
あなたの売上はいくらですか? [事務所経営]
月刊「シリエズ」編集では現在、「新・会計事務所の給与が分かった!!」と題する新しい書籍を製作中です。これは7年程前に発行した書籍の新版で、全国の会計事務所の給与事例と給与に関するさまざまな資料を収録しています。
この本の取材の過程で、興味深い話をいくつも聞くことができました。ここでそのひとつをご紹介しましょう。
近畿地区のある事務所では、新卒中心の採用を行なっていますが、欠員などの関係で中途採用を実施することがあります。中途採用ですから、当然採用する側としては即戦力を求めることになります。そこで、面接の際に所長はあるひとつのことを必ず聞くことにしています。それは「前の事務所ではいくら売上ていましたか」という質問です。
これに対する応募者の反応は「は?」「エー?」といった要領を得ないものばかりだといいます。つまり、自分が前の事務所でいくら稼いでいたかわからないのです。というより、「そんなことなど、考えたこともない」というのが実体かもしれません。
一昔前なら、これは質問者のほうが変わったことを言うと見られたかもしれません。かつての職員は黙々と月次や決算をこなしていればよく、その仕事の大半は作業でした。したがって、経営感覚はゼロでもよかったのです。
しかし、今は違います。事務所への利益貢献があってはじめて給与がもらえるのです。ただ、作業をしていれば賃金が保証されるという時代ではありません。ところが、多くの会計事務所の職員はいまだに自分がいくら稼いでいるかもわからないのです。
そもそも事務所の売上など、自分には関係ないと考えているふしすらあります。もちろん、先進的な事務所では個々人が経営に参加し、積極的に売上を伸ばそうとしています。先の事務所でも売上高を基準に給与考えているから、こうした質問をしたのです。
この差はきわめて大きいといわざるを得ません。事務所の売上を挙げるという使命があるのとないのでは、天と地ほども行動が変わるはずです。
今回の取材を通じて、会計事務所の間でも業績給の導入が広がっていることが明らかになりました。業績、すなわち売上と給与がリンクしている。というより、そうすることが時代背景としても求められているわけですから、所長も職員も意識改革をしないと勝ち残っていくことが困難になってきているわけです。
当たり前のことですが、経営の基本は売上を上げることにあります。これをスタッフが意識して行動するか否かで、今後さらに成果の差が開いていくのではないでしょうか。(月刊シリエズ編集部)
![]()








