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仰木マジックに学ぶマーケティングのテクニック [関連情報]

2005年12月22日

仰木マジックに学ぶマーケティングのテクニックオリックスバファローズの前監督の仰木彬氏が逝去した。昨年来の球界再編の流れの中で誕生した合併チームの初代監督を務め前年最下位のチームをプレーオフ争いを展開させるまで立て直した。またイチロー、野茂といった個性的な選手を育成し、その手法は「仰木マジック」とまで称された。仰木マジックの正体とは何か。それは、マーケティングの手法以外の何物でもなかった。

仰木氏は西鉄ライオンズの黄金期を支えた名二塁手だった。中西、豊田、稲尾という一匹狼が揃った選手の中でまさに「いぶし銀」的な存在だったという。そのせいもあり、現役時代には名前が出ない存在であり、まさに玄人受けする隠れた存在だった。

そして現役引退後も18年もの間、コーチを務め、彼が監督して脚光をあびるようになったのは、すでに50歳を過ぎてから。だが、現役時代から「魔術師」と称された名将・三原監督の教えをうけ、それを自分なりにアレンジし独自の野球理論を構築し、自らもリーグ優勝3回、96年にはイチローを擁し日本一も経験した。

仰木マジックと称される仰木氏の采配の特徴は細かいデータ集積にある。そういう点では、今年日本一になったロッテマリーンズのボビー・バレンタイン監督と似ている。逆に同じデータでも来年から楽天の監督に就任する野村氏とはデータの使い方が違う。

仰木氏のデータの特徴は自分の選手の長所を生かすために一番最適な組み合わせを考えることにある。相手の戦力(特に投手)の分析をすることで、この投手なら、どの打者が相性が良さそうで、誰が良くないかということを重視する。

一方野村氏のデータの使い方は相手の弱点を知るためにある。どういう攻めかたをすれば、相手の長所を消せるかということに主眼を置いている。ここに両者の最大の違いがある。

もちろん、仰木氏も相手の特徴を消すことはするし、野村氏も選手の特徴を生かす采配はする。(だから野村再生工場などともいわれる)

もちろん、こうしたデータを集積し、分析し、仮説を立て、実践し、その結果をデータ化するというようなことがマーケティングを生かした野球理論の構築といえるのだが、仰木氏あるいは、バレンタイン監督のマーケティング術はそれだけではない。

それは「売り込み」方である。仰木氏でいえばイチローだ。仰木氏の凄いのは、イチローの能力を見出し、開花させたことだけではない。むしろ、その「売り込み」方だった。イチローと登録名を替えたのはイチローがまだ無名の時期。だれも鈴木一朗の存在を知らないときだった。

無名の選手を一目見て、能力を見抜き、そして名前を売り込むために、登録名まで変更させた。そのことにより、鈴木一朗という全く「つまらない平凡な」名前を「イチロー」というカタカナにすることで一躍国民的ヒーローに仕立てた。もちろん、イチローの能力がそれだけ凄かったことが最大の要因ではあるが、「イチロー」という登録名にしていなければ、また違ったともいえる。

バレンタイン監督でいえば、ファンに対し26番目の選手(ベンチ入りは25人まで)という意識をうえ、さらには背番号「26」をファンに与えた。そのことでファンとベンチの一体感がうまれ、いまやマリーンズファンは阪神ファンをも凌ぐ、日本一のサポーターと称されるまでになった。それも、バレンタインの戦略だったのはいうまでもない。

バレンタインはどうか知らないが、恐らく仰木氏やその手本となった三原氏などはマーケティングなんていう言葉は知らないだろう。しかし、その手法は確実にマーケティングの基礎を忠実に行なっているとしか思えない。なぜ、仰木氏やバレンタインが起用する選手が活躍するのか。日替わり打線と揶揄されながらも成果を残せるのか。そこにはマーケティングの考え方が隠されているのである。

仰木氏はその野球理論だけでなく、誰からも愛されるキャラクターを持っていた。お洒落であり、茶目っ気があり、また男気があった。今回も昨年来より体調を崩しており、監督就任も本来ならできるような状態ではなかったという。しかし、「グラウンドで死ねれば本望」といい、また昨年に野球殿堂入りした際のパーティーを「生前葬」だといい、今回は全くの密葬としている。そうした潔さも仰木氏の魅力の一つといえる。一人の人間として見習いたい潔さでもある。

仰木氏のご冥福をお祈りいたします。