事務所を成長させる経営計画とは [事務所経営]
「経営計画にとって理念は前提です。理念なき経営計画は絵に描いた餅。何の意味ももちません」。経営計画と経営会議を基本に関与先の100%黒字経営をモットーとする今西崇男税理士(エーアイエフ合同会計事務所・東京)は言う。
競争が激化するなかで勝ち残る会計事務所になるためには、企業化が求められ、それには経営計画が必要不可欠だと思われる。企業化するということは利益を追求するということでもある。しかし、会計事務所が他の企業と違うのは、基本的に企業の最も大事な内部情報に触れる業務であり、「信頼」を勝ち得なければ、事務所の成長はありえない。
ワタミフードの渡邉美樹社長は「お客様の喜びの数が私たちの成長度合いを決める」といっているが、それに従えば、会計事務所は「お客様の信頼の数が事務所の成長を決める」ともいえるだろう。
企業化にむけて必要不可欠なものが経営計画であり、経営理念がその前提となるならば、まずは経営理念が明確になっているかどうか、自分の言葉になっているかを検証しなければならない。職員全員の意見を聞く必要はない。もちろん、全員で考えを出すということを否定するものではないが、経営理念は経営者の魂である。経営者が自らの魂を人と相談して決める必要はない。何をしたいのか、自分は税理士として何をすべきなのかを自らの言葉で考え、そして職員全員に知らしめるべきなのである。
なぜ、そうする必要があるのか。それは言葉は風化してしまうからだ。たとえ素晴らしい言葉、理念であっても、その本当の意味を正確に理解できるのは、最初に言葉を発した本人とごく一部の人間である。経営者本人が自らの言葉で職員、関与先に浸透させることがのぞましい。
経営理念がなくても経営は可能である。理念などなくても売上はあがる。しかし、それでは、所長税理士もしくは職員の個人プレーだけで売上があがるだけで、チームとしてはバラバラになる可能性がある。野球でいえば、たとえ一人の選手が首位打者を取ろうが、最多勝を取るような投手がいても、チームとして一丸になっていなければ、なかなか優勝をつかむことはできない。そのため、最近ではスローガンを掲げるチームがほとんだ。それにより、チームとしてどんな野球を野球を目指すかという方向性がしっかりすることで、秀な選手の力をチームの力として発揮することが可能になる。それが企業における経営理念なのである。
また、経営理念を考えるにあたり、もう一つ注意すべき点がある。それはわかりやすい 言葉、印象に残る言葉が望ましいということである。
先の総選挙で小泉首相は郵政民営化を争点に掲げ、「改革を止めるな」をキャッチフレーズに掲げた。政治手法としてはやや乱暴なきらいはあるが、分かりやすいという点では他党を圧倒していた。
誰にも分かりやすい、覚えやすい言葉というのは、職員に対しても、また関与先に対しても重要になる。関与先に職員が事務所の経営理念を問われたとき、簡潔明瞭に答えられるのが望ましい。「どういう意味なのか」と聞かれたときに、答えられないようではその経営理念は単なるお題目に過ぎないといえる。
そうした経営理念があってはじめて経営計画に魂がはいり、実効性がうまれる。「経営計画を策定したのに、職員がバラバラに動く」と考えている事務所の所長税理士は、経営理念を職員全員に質問してみたらどうだろう。恐らく全員が同じ解答にならないのではないだろうか。そうならば、自分でもう一度、今ある内容を考え直し、自らの言葉に置き換えてみる必要があるのかもしれない。(「月刊シリエズ」より)








