拡大成功4事務所の秘訣に学ぶ(前編) [商品紹介]
会計事務所の拡大を阻害する要因とその解決策
会計事務所の拡大を阻害する要因とはなんだろう。これを明確にし、一つ一つの課題をクリアできれば必ず成果は出るはずだ。そこで、ここでは具体的な4つの課題を抽出し、これを克服した事務所の事例をもとに解決の方策を示す。
職員のやる気をどう引き出すか
所長1人の営業では限界がある。そこで、職員にも拡大や業務受注をさせたい。しかし、笛吹けど踊らずで、なかなか職員がやる気になってくれない。
こんな悩みを抱えている事務所も少なくないだろう。会計事務所の職員はもともとマーケティングやセールスが苦手。できれば月次と決算のルーチン業務に徹したいと考えているのが一般的かもしれない。
こうした職員の意識を変えることは容易なことではない。下手をすれば反発を買い、日常業務すらストップする可能性もある。
21人のスタッフのうち8人が集団退社。こんな事件を経験し、そこから見事に立ち直った事務所がある。東京都八王子市の井上会計事務所がそれで、2003年にはなんと年間90件もの新規拡大を果たしている。正社員が15人の事務所でこれほどの成果が上がったのはなぜか。それはひとえに職員のやる気を見事に引き出せたからだ。
所長の井上得四郎氏は集団退社事件を振り返って「経営者がスタッフの気持ちをわかっていなかった」と語る。この反省から井上氏は事務所改革に乗り出した。
井上会計が取り組んだのは全員参加の早朝研修。毎朝8時20分から30分間のこの研修は今も続いている。「5年目ぐらいに職員の目つきが変わってきた」と井上氏は振り返るが、ここではビデオなどの教材を用い、全員でディスカッションするのが大きな特徴だ。
全員が意見を述べ合うことで、事務所としてのベクトルもひとつに定まってきた。加えて同事務所では経営情報を開示することで透明度を高め、職員のやる気を引き出すことに成功した。
新規拡大のキャンペーンを行なうにあたっても、なぜ拡大する必要があるのかを全員で確認し、キャンペーンのポスターをいたるところに貼るなど、お祭り騒ぎで楽しく展開した。むろん、成果報酬としての担当者へのフィードバックの仕組みも作ったが、それよりも事務所を成長させようという職員の意識の高さが年間90件という成果に結びついた。
この例のように職員のやる気を引き出すことに成功している事務所では、経営情報の公開を行なっている。また、経営計画の作成に職員を参加させているケースも少なくない。そして、日常的には研修の場をうまく利用している。
先に紹介したように、井上会計の研修では全員に意見を述べさせているが、このような参加型の研修スタイルを採用することが大きなポイントになる。所長が一方的に話したり、実務オンリーの研修では職員の参加意識を高めることはできない。職員に発言させ、その声を聞く姿勢が所長には求められる。
一人ひとりの職員とのコミュニケーションの場を増やすというのもひとつの方策だが、全員が同じ時間と空間を共有する研修はこれより効果が高いといえるだろう。また、この研修を勤務時間外に行なうこともひとつのポイントになる。わざわざ勤務時間外に皆で集まり、ディスカッションを繰り返していくと連帯感や信頼感が生まれるからだ。
要は職員の参加意識を高めること。いわれたことをやっているのではなく、自ら考え行動する職員を育てる。そのためには権限委譲も必要だろう。
しかし、これ以前のこととして事務所のビジョンが明確であり、そのビジョンを実現するために共通の価値観を持つことはさらに重要だ。こうした土台が未整備の場合には研修を通じてこれを確認していく必要もあるだろう。
DMなどで成果を出すためにはどうすればよい
大阪府大阪市の㈱柴田ビジネス・コンサルティングでは、ポスティングとDMを中心に積極的なマーケティング活動を行なっている。所内に増収増益委員会を設け、マーケティングの担当者も決めてレスポンスを確実にクロージングに持ち込んでいる。
DMには費用がかかるが、これも採算ラインに乗っているという。DMを実施している事務所は少なくないが、その多くは成果が出ずに苦戦している。これについて所長の柴田昇氏は「仕組みの問題」を指摘する。
同事務所ではFAXや電話によるレスポンスがあった際、その対応法を明確なフロー図として描いている。こうした仕組みができていれば、案件や情報の取りこぼしがなくなるわけだ。
柴田氏は所長が直接動いてはうまく機能しないという。スタッフがシステムにしたがって動き、これを承認する形が望ましいと指摘している。
また、同事務所では経営計画や建設業の会に入り、売上を伸ばしているが、ここでの成功要因も「スタッフに任せたこと」(柴田氏)だという。所長が考えたことを職員にやらせるのではなく、職員に考えさせ、実行させることがマーケティングでも業務でも重要になるというわけだ。
同事務所のマーケティング活動はDMやポスティングだけではない。名刺交換した際には必ずお礼状を出すほか、バースデーカード、クリスマスカード、メールマガジン等も積極的に活用している。こうした複合的な仕掛けがDMを勢いづかせる効果をもたらしている。
むろん、これは顧客からの紹介をもらう上でも効果がある。事務所の誠意を見せることで、信頼と安心感をもってもらう。たとえ時間がかかったとしても、これが成果に結びつく可能性は高い。
同事務所では設立して間もない会社を対象にDMを出しているが、こうした対象の選別とDMの中身ももちろん重要だ。しかし、多くの事務所ではDMで反応があっても、クロージングになかなか持ち込めないという悩みを抱えている。実はこのことが一番の懸案になっているという話をよく耳にする。
これはクイックレスポンスやアピールが十分にできていないことも要因の一つと考えられる。
また、新規の訪問の際にはツール類も重要になる。同事務所では医師や資産家など、対象別に名刺とパンフレットも細分化し作成しているが、こうしたツールが専門性の高い事務所をアピールすることにつながっているわけだ。
このように、まず見込み客からのレスポンスにはどのように対応するのかを日頃から明確にしておく。そして、持参するもの、説明の仕方も事前に決めておく必要がある。
だが、これだけでは十分ではない。というのは、クロージングに持ち込む際に最大のネックになるのが顧問料だからだ。柴田ビジネス・コンサルティングでは顧問料の決定を担当者にゆだねているが、ここまでは任せきれなくても、事前に金額のゾーンを決めておくなどの対処は必要だろう。
顧問料が決められずに、何度も事務所に持ち帰っていたのでは、ビジネスチャンスを逃す結果になりかねないだろう。(後編に続く)
(「月刊シリエズ」より)








