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キャッシュフロー経営の徹底で売上150%アップ [関与先を倒産から救え!]

2005年03月22日

腕はいい。仕事も熱心。それでも経営を知らなければ、会社を倒産させてしまうこともある。それを救うのは税理士によるきちんとした経営指導である。今回は経営指導の成功によって売上を150%アップさせた税理士と社長の物語である。

初めて見た帳簿は上から下まで「仮払い金」

キャッシュフロー経営の徹底で売上150%アップ「なんですか、これは」5年前に初めて、新橋板金を訪れたC税理士は帳簿をみて、茫然自失してしまった。帳簿に記された支払い項目には「仮払い」の文字が上から下までびっしりと並んでいた。

自動車の修理工場をしている新橋板金では、その当時は別の税理士との間に顧問契約をした。しかし、その年の7月30日。その会計事務所から1本の電話が入った。
「あ、新橋社長。あしたまでに1000万円、税金納めておいてください」
「え、1000万円ですか。今日の明日ですか」
「それだけ利益が出たってことでしょう」
そういって電話はガチャリと切れた。新橋板金の決算は5月。その時は何も聞いてはいなかった。新橋社長が怒ったのは当然である。そして以前にロータリークラブで知り合っていたC税理士のところに相談に訪れていたのである。

C氏がまず着手したのは、仮払い金の内容確認だった。しかし、1ヶ月やそこらなら覚えていても半年、ましてや1年以上前のものなど覚えているわけもなかった。
「一体、前の税理士は何やっていたんですか」
そこでC氏が新橋社長から聞いた話は唖然する話だった。前の税理士は隣町ということもあったのかもしれない。30分くらいの話で書類を持って帰り、試算表は年に1回くらいしか持ってこなかった。「毎月くれば、仮払いの相手だって覚えているのに」。C氏は今でもその税理士のやり方に憤慨する。

「このままでは、銀行からの融資を受けられなくなる」。C氏がまず不安に感じたのは、こんな仮払いだらけの帳簿を見せても誰も信じない、ましてや銀行が認めるわけがないと感じたことだった。

1年がかりで調べなおしたものの、結局500万円ほどは判明しなかった。仕方なく、新橋社長に500万円ほど個人負担してもらい、使途不明金として処理することにした。そして経理を担当していた社長夫人を解任する形にした。

「別に奥さんが一人だけ悪いわけではないけど、社長夫人が経理をしていて、全部仮払いとか、使途不明金では怪しまれるでしょ。だからそうしてもらったんです」

ミニセミナーを開催して社員にキャッシュフローを説明

問題はまだあった。新橋社長が経営について知識が不足していたことだった。
「社長、今月も好調だね。売掛金が1500万円もあるよ。利益は500万円もあるよ」
「そうだね。思ったより受注があったからな」
「でも、現金苦しくないかい?」
「そうなんだよ。何でだろ?今月苦しいんだ」
「そりゃそうだよ。売掛金がこれだけあったら、帳簿上はプラスでもキャッシュフローはマイナスだよ。こんな会社、銀行も融資してくれないよ」
「え、キャッシュフロー? 何、それ?」
それからC氏による臨時の経営塾が始まった。時には、ホテルの一室を借りて半日がかりで13人の社員全員を集めてセミナーを開催したこともある。
「それこそ、ツナギを着た作業員の人も集めて、全員に話しましたよ」

C氏がそこで訴えたのは、仕事をして、売上が上がって、それで終わりなのではない。売掛金を回収して初めて売上は完了するのだということをコンコンと説明した。もちろん、全員がすぐに了承したわけではない。中には何十年も板金一筋でやってきた作業員もいる。そんな人にお金を回収しろといっても素直に納得するわけはなかった。しかし、C氏は社員全員が納得するまで説明した。そして全員が納得したことを受けてC氏は次の戦略に移った。
 
数字が見えるようになって社長に経営感覚が生まれた

キャッシュフロー経営の徹底で売上150%アップC氏は、それまでの年功序列型の給与規定から歩合給制に移行してもらうように指導した。中には10万円近く給料の下がった従業員もいる。逆に売掛金の回収が上手な若い社員は大幅な増給となった。「でも、それが大事な仕事だと全員が納得してもらっているから、大きなトラブルはなかった」とC氏は振り返る。

数ヶ月すると新橋社長に変化が見られるようになった。数字を見る楽しみが出てきたのだ。そして、いつしか新橋社長自身がキャッシュフローについて仲間に紹介するようになっていた。
「正直、自分が不勉強だっただけなのかもしれませんが、本当に目の前がすっきりした感じがしました。だから是非、知り合いに話したくなって・・」
地域の中小企業同友会やロータリークラブで集会のあるたびに新橋社長は一人また一人とキャッシュフロー経営について語った。

経営に対する余裕がヒット商品を開発

現在、車の修理工場はほとんどがディーラー頼りの仕事をしている。それは現状のシステムでは自動車を売ったディーラーが保険や車検などもDMを出して仕事を取ってしまうからだ。結局修理工場はディーラーが引き受けた仕事を下請けする場所になっているケースが多い。新橋板金もそんな一面を持っていた。

しかし、新橋社長は発想の転換をしたフランチャイズに挑んだ。それは板金ではなく、ペイント。「ちょっとした傷ならペイントやコーティングで安く直します」。この企画が大当たりした。これまで修理工場には訪れないような若い女性が増えだした。もちろん、コーティングだけなら1回3000円とか5000円だけの手間賃だが、たいていのお客さまの車には、他にも修理すべき個所がある。その部分は今までの修理工場の部分で引き受けるので、売上が飛躍的に増加することになった。こうすることによって対前年比150%の売上増につながったのである。

C氏との出会いを新橋社長はこう振り返る。
「本当にC先生と出会えてよかった。もし、あのまま前の税理士と顧問契約を結んだままだったら、何かアクシデントがあったとき、銀行の融資も受けられなかったかもしれないし、そうしたら1発で倒産なんて可能性もあったかも知れない。それに、親身になって経営について教えてくれたので、経営の本当の楽しさが理解できた。だから、今回のことも成功したと思う。これもC先生のおかげです。私からしたら神様みたいな存在ですよ」
現在C氏は金融機関の見直しを新橋社長と検討している。

(※登場する人物名・企業名はすべて仮名です)